Impact & Expertise

タイムベース競争

多種かつ少量の製品・サービスを、より迅速に提供しようとすれば、コストがかさみ、収益性を圧迫するという旧来の常識は、80年代の日本での実例により覆されました。BCGは80年代後半に、時間が競争優位の強力な源泉であることに着目して、「タイムベース競争」というコンセプトを提唱しました。コストや品質と異なり、「より早く、より速く」を実現する組織能力は、外部からは見えにくく、それ故模倣することが難しいマネジメント能力です。

BCGではさまざまな業界で、迅速にクライアントに価値を届けることにより持続的競合優位を築くお手伝いをしてきました。

基本コンセプト
  • 第三の競争の軸としての時間

    「研究開発力や営業力の強化、継続的なコストダウンは当然やるべきこと。むしろ全社員が心掛け、アイデアを出し、取り組まなければならないのはスピードアップ」とは、最近のある経営者の言葉です。「Time is money」の言葉の通り、時間の価値は古くより認識されていますが、果たしてどこまで時間の価値の向上に戦略的に取り組んでいるでしょうか。

    時間を第三の競争の軸としてとらえた「タイムベース競争」の基本哲学は、時間こそが企業と顧客の双方にとって最も貴重な資源だという、極めて単純かつ明快なものです。顧客は消費者であれ、企業であれ、高い時間弾力性を有します。同じ価格・品質・性能の製品・サービスであれば、それが早く手に入るほど、需要は大きく、顧客満足度も高いことが分かっています。言い換えれば、同じ品質・性能のものであれば、早く届けられるほど価格も高く設定できることになります。 

  • 時間優位

    タイムベース競争を実践することで、企業は売上と利益双方の向上を図ることができます。これは四つの要素で考えることができます。

    (1) 価格プレミアム: 上で述べた時間弾力性の存在によって、より早く/速く提供することで高い価格を設定するチャンスがあります。

    (2) 生産性向上: サイクルタイムを短縮することにより、同じ時間で多くの業務をこなすことができ、生産性が向上します。

    (3) リスク低減: 将来の市場予測は長期のものほどブレが大きくなります。特に季節変動の大きいファッションや食品の場合、開発・生産のリードタイムが短いほど市場・在庫リスクを低減することができることは明白です。

    (4) シェア拡大: (1)~(3) によりシェアを拡大し、さらに累積経験によるコスト低減、研究開発期間短縮による商品上市の早期化などにより優位性を高めることができます。

    このように、時間を武器に戦略的自由度を拡大し、競合優位性を一層高めていく、というポジティブ・フィードバック・ループを形成できるのです。これが「時間優位」です。

  •  タイムベース競争企業に求められるもの

    多くの企業にとって、「時間」はコストや品質と異なり、経営目標に明示的に組み込まれていないだけに、その価値が見えにくくなりがちです。多くの経営者が時間の重要性を認識していながら、掛け声で終ってしまうことが多いのはそのためです。「見えないものはマネージできない」の言葉通り、タイムベース経営を実践するためには、時間の価値を可視化することが先決です。

    プロジェクトマネジメントや製造業の現場ではプロセスのモニタリングができており、時間の価値が目に見えることが多い一方で、研究開発部門などではプロセスが厳密に管理されておらず、時間が可視化されていないということはないでしょうか。

    製薬企業の臨床開発では、最も時間のかかるプロセスの一つに臨床試験の患者組み入れがあります。所定の患者数を組み入れる計画を立てても、計画からズルズルと実際の組み入れが遅れてしまうことがよくあります。BCGが支援したある製薬企業においては、それまでモニタリングされていなかった患者組み入れ状況を時間で追い、遅れを検知することでプロセスを加速する余地を定量化しました。その後別のプロジェクトでプロセスをモニタリングする方法を導入したところ、計画通りに目標組み入れ患者数を達成することができました(図1)。

    また、企業活動の中で、付加価値を創出している時間の割合を見てみるとどうでしょうか。次の工程への移行、意思決定すべき会議のスケジュールなど、至るところで待ち時間が生じてはいないでしょうか。これらの待ち時間は本当に不可避なものなのでしょうか(図2)。仮に同業他社が、外からは見えない企業内部の活動で時間短縮を図っているとしたら、生産性で早晩差がつくのは明白です。 

最近のプロジェクト事例
BCGでは、医薬、金融、産業財、サービスなどの幅広い業界で、時間を武器に持続的な競合優位を構築するお手伝いをしています。
研究開発のスピードアップ、営業・生産・受発注などのプロセス再構築、複数機能の連携強化によるスピードと質の向上、顧客対応の迅速化による顧客満足やロイヤルティの向上、時間を軸に顧客の生産性を高めるサービスの開発など、さまざまな分野でタイムベース競争のコンセプトが活用されています。最近の代表的なプロジェクト事例を図3にあげます。
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